多くの企業がダイバーシティ推進の取組みを進めている現在、LGBTにも注目が集まっています。性的マイノリティとされる人々が働きやすい環境をつくるためには、すべての従業員に研修で正しい知識を身に付けてもらうことが大切です。
今回はLGBT研修の内容や、成功のためのポイントについて解説します。また当社おすすめのLGBT研修16選も紹介しているので、研修ご担当者様はぜひ参考にしてください。
そもそもLGBTとは
LGBTは以下の4つの性の頭文字をとった言葉です。
- Lesbian( 女性の同性愛者)
- Gay(男性の同性愛者)
- Bisexual(両性愛者)
- Transgender(出生時の生物学的性別と性自認の不一致)
上記に「Q+」を加えて「LGBTQ+」と呼ばれることもあります。「Q」は「Queer/Question」の略で、自身の性がはっきりとわかっていない、あるいは流動的な人々のことです。また「+」はその他の多様な性すべてを包括した表現になっています。
全人口に占める割合については諸説あります。一例として、電通グループの2023年のスクリーニング調査によると、全国の5万7500人(20〜59歳)に占めるLGBTQ+当事者層の割合は9.7%でした。これは左利きの人やAB型の人の割合にも近い数値となっています。
LGBT研修が求められる理由
次に、今企業にLGBT研修が求められている理由を3点、解説します。
ダイバーシティの推進
現在は多くの企業でダイバーシティ推進を目指しており、LGBT研修導入はその取組みの一環となります。
ダイバーシティとは「多様性」を意味します。異なる特徴やバックグラウンドを持った人たちが共に活躍できるような組織づくりを行うのが「ダイバーシティ経営」です。多様な価値観に基づく意見交流が行われることで、イノベーションが起こりやすくなる、国際的人材にも選ばれやすくなるなどのメリットがあります。
国内でも、楽天やソニーなどの企業が同性パートナーも福利厚生の対象者として扱うよう社内規定の変更を行うなどの事例が増えており、LGBT人材に配慮した組織の整備が進められています。
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企業への就業意向・イメージへの影響
LGBTへ積極的に取り組む姿勢は、企業に対するイメージを高め、人材確保にもつながる可能性があります。
先の電通グループの調査によると、「LGBTQ+をサポートしている企業で働きたいと思うか」という質問に対し、非当事者層を含む回答者全体のうち約6割の人が「働きたい」と回答しました。
この調査ではLGBT当事者のみならず非当事者も、LGBTQ+支援を表明する企業について「社会の変化に対応できる」「ハラスメントが少ない」といった良いイメージを抱くことがわかっています。
多様な顧客・市場への対応
LGBTへの理解は人材活用や確保のためだけではありません。国内のLGBTの割合が1割近いということは、自社の顧客や市場にもそれだけ多くのLGBT当事者がいるのです。
実際にLGBT関連の商品やサービスを総称した「レインボー消費」の国内市場は、現在6兆円近くに成長しているといわれています。男女にこだわらない制服や、同性カップルも利用できるウェディングサービスなど、顧客や市場にLGBTがいることを想定した事業展開が求められています。
LGBTQ研修の価値を深める4つのポイント
それではLGBT研修を実施する意義を最大化させるにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは4つのポイントを解説します。
(1)企業の目的や理由によって内容をアレンジする
1つ目のポイントは、自社がLGBT研修を導入する目的や理由に合わせて、研修内容をアレンジすることです。
講師や研修プランを選定する前に、まずは「何のためにLGBT研修を導入するのか」を明確にしましょう。「LGBTへのハラスメントを予防したい」「企業ができるLGBTへの配慮とは具体的にどういうことなのかを理解したい」など、目的は企業によってさまざまです。
研修会社や講師に、自社の状況や研修の目的を明確に伝えます。専門家に講義内容やグループワークのテーマを調整してもらうことでテーマのずれを防ぎ、求める成果が得られるようになります。
(2)グループワークやディスカッションなどを取り入れる
2つ目のポイントは、グループワークやディスカッションなどを取り入れることです。
話を聞くだけでは、LGBTの問題の奥にある自分自身の先入観までは変えられないかもしれません。そこで例えば「手続きや施設について、もし自分がLGBTだったら思い至る改善点がないか」や、「知人にLGBT当事者であることの悩みを相談されたらどうするか」などのテーマでディスカッションします。
また他の参加者の意見を聞くことで、意識や行動を変えるきっかけとなるさまざまな気づきを得られるでしょう。
(3)当事者や支援経験のある講師を選定する
3つ目のポイントは、LGBT当事者や「アライ」と呼ばれるLGBT支援者を講師として選定することです。
LGBT研修では、当事者が実際に体験したエピソードや、そのとき何に悩んだかを共有することが非常に効果的です。受講者にとってはリアリティが感じられます。
しかし受講者の多くはLGBTの非当事者です。そのため当事者だけでなく、非当事者の講師が支援方法を伝えることにも大きな意義があります。受講者と同じ非当事者の立場で、LGBT支援を始めるきっかけとなった出来事や、カミングアウトの受け止め方などを解説します。
(4)動画や資料を活用する
最後のポイントは、無料で提供されている動画や資料の活用です。
一例として、メルカリでは、LGBT+への理解を深めることを目的とした自社独自のオンライン研修「Mercari Pride E-Learning」を社外にも公開しています。またLGBT人材の採用支援を手がけるNijiリクルーティングも「LGBT取り組みの進め方」という資料を無料で提供しています。
これらの研修用資料は、企業に内在するLGBTへの課題を知る第一歩となるでしょう。
LGBT研修で学ぶ6つの事項
次に、LGBT研修で学ぶ内容について詳しく解説していきます。
①LGBTとは何か
まずはLGBTの定義を理解しなくてはなりません。
LGBTの4つの意味はもちろん、そもそも性には「身体的性別」「性自認(心の性)」「性的指向(どの性を性的興味の対象にするか)」の3つの軸があり、個人の性はそれらに基づいて成り立っているという基本的な概念を学びます。
②性的少数者や性的志向に関するさまざまな用語
LGBT研修では、LGBT以外の「性自認・性的指向(=SOGI・ソジ)」にまつわるさまざまな用語についても知ることができます。
例えば性自認がはっきりと定まらない「エックスジェンダー」や、恋愛感情を抱かない「アセクシュアル」など、性のあり方は多種多彩です。
重要なのは、すべての人がいずれか1つの呼び名に明確に分類できるわけではなく、3つ軸はそれぞれに人によって程度の差があるということです。
研修では性のあり方をグラデーションとして捉え、一人ひとりに個性的な性があることを学びます。
③当事者とのコミュニケーション
研修では、実際に当事者とコミュニケーションをとる場面でどのように対応するべきかを学びます。
例えば上司が部下から「実は私はトランスジェンダーで…」とカミングアウトを受けたり、特定の社員に対別の社員たちが「あの人はLGBTなのでは」と噂する現場に立ち会ったりと、ビジネスシーンでLGBT当事者の存在を現実的に受け止める場面も出てきます。
そのようなときに間違った対応で当事者を傷つけないよう、「1つの型に決めつけない」「大げさにリアクションしない」「何かサポートできることがあるか聞く」といったコミュニケーションの心構えを知っておくことが大切です。
④ハラスメントやアウティングの実例
研修では、SOGIに関するハラスメントの実例も紹介されます。
例えば「若い女性が多い現場を嫌がる男性社員なんていないと思うけど」という存在の否定、あるいは「君はもてそうなのに、いつまでも独身なんておかしいんじゃない?」というからかいは、すべてハラスメントです。また当事者からカミングアウトされた内容を勝手に言いふらすことを「アウティング」といい、これも本人を傷つける行為となります。
どのような言動がハラスメントにあたるのかを事例で知ることで、受講者はハラスメントへの自覚を高められます。
⑤ケーススタディとグループワーク
先に述べたように、LGBTの問題への理解を深めるには、ケーススタディやグループワークの時間も有効です。
例えば「個人面談で部下がカミングアウトしたとき、上司はどのような対応をすべきか」といった例題に沿って、参加者各自が考え、ディスカッションを行います。この事例の場合、実際に部下役と上司役の両方の立場をロールプレイングで実演すると、より当事者の目線に立って考えることができるでしょう。
⑥職場づくり、制度や体制整備の事例
LGBTを支援する「アライ企業」として必要な制度や取組みについても、事例を交えながら学びます。
まずは社員や顧客の性自認や性的指向に関する企業としての方針を定め、社内に周知していきましょう。それに基づいて採用や福利厚生などの細かいルールを整備していくことが重要です。
さらにトイレや更衣室などの設備の見直し、万が一ハラスメントが起きたときの相談窓口や加害者への罰則なども決めておくとよいでしょう。
何よりも一人ひとりの性のあり方についての認識をアップデートし、誰にとっても働きやすい職場づくりが大切であるという理解を深めていきます。
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LGBT当事者・関係者に聞く! SBおすすめのLGBT研修プラン
当社でも当事者や支援者講師によるLGBT研修のプランを多数ご用意しております。ここではおすすめ研修プラン16選をご紹介します。
LGBTQを知る
~身近にいるセクシュアルマイノリティ~
トランスジェンダー当事者であり、LGBTQ啓発活動で活躍する講師による研修プラン。講師自身の体験談を中心とした講義で、LGBTQに関する正しい知識を身に付ければ、当事者の抱える問題をより身近に感じられるようになるでしょう。
LGBT研修(企業様向け)
LGBT当事者の社員が前向きに活躍できる組織をつくるには、まずカミングアウトしやすい職場づくりが求められます。自身も長年職場でカミングアウトできずに苦しんだ経験のある講師が、当事者目線での問題点やアライの重要性などを解説します。
職場における LGBTQ 「日本編」
LGBT当事者の心理的安全性を高めれば、職場のパフォーマンス向上が期待できます。LGBTについて、講師が基本的な知識からわかりやすく解説します。また研修の時間内で匿名での質問にも対応。双方向のやり取りで理解を深められるプランです。
あたりまえにそこにいるLGBTs~知ることから始める性の多様性
作家であり、甲南大学で教鞭を執る講師が、性の多様性について学究的なアプローチで迫ります。LGBT当事者だけでなく、すべての人が自身のセクシャリティについてとらえ直す機会になるでしょう。またトランスジェンダーの当事者視点からの解説で、社会が抱える課題についても学べます。
LGBTQと企業
~職場でのダイバーシティを考える~
LGBTの問題に取り組むことは、炎上や訴訟といった企業トラブルを回避するリスクマネジメントの観点からも重要です。トランスジェンダーの当事者でもある講師が、企業におけるダイバーシティの重要性を説きつつ、ビジネスパーソンのマナーとして知っておくべきLGBTの基礎的知識を伝えます。
LGBT講座
~一人ひとりが自分らしく生きる~
ゲイ当事者として長年カミングアウトできずに苦しんだ経験をもつ講師が、自身の体験から「自分を受け入れる」ということのヒントを伝えます。LGBTの基礎知識と、講師の幼少期の葛藤から、カミングアウトに至るまでの実体験についてを理解する研修プランです。
トランスジェンダーについて
~LGBTのTの話~
元女性で性別適合手術を受けた講師による、実体験に基づくLGBT研修。LGBTの中でも、講師自身の経験を踏まえて「T=トランスジェンダー」の話に特化したプランです。LGBTが直面する法的な問題や、社会全体が抱える今後の課題についても詳しく説明していきます。
LGBTを理解する
~職場のダイバーシティを考える~
講師は元タカラジェンヌで、レズビアンとして日本で初の同性パートナーシップ証明書を取得しました。LGBTについて理解を深めたいと考えているビジネスパーソンや管理職向けに、職場のダイバーシティ推進のポイントを伝えます。
男らしさ、女らしさより「自分らしさ」が社会を変える
~LGBT・男性・女性とは~
性差ははっきりと区別できるものではなく、同じ「G」や「T」の中でも人により微妙な違いがある、グラデーションのようなものです。全国の自治体、大学、企業などで講演を行う人気講師による研修プラン。女装パフォーマーとして聞き手を楽しませながら、受講者に気づきを提供します。
「ふつう」ってなんだろう? ~性的マイノリティから考える人権~
「差別は無知から生まれる」というメッセージを込めて、性的マイノリティと人権について考えるセミナー研修プランです。講師は世界で初めて戸籍変更後に議員に当選し、国外のメディアからも注目を集めました。まずはLGBTとは何かを知り、誰もが「自分らしく生きる」ことができる社会について考えましょう。
性的マイノリティと心の支援
講師は臨床心理士かつLGBT当事者で、本プランは「性的マイノリティへの支援」がテーマです。いまだLGBTへの理解が十分ではない社会で、どうすれば身近な当事者の心のヘルプサインに気づき、その不安を解消することができるかについて考え、行動につなげていきます。
~多様な人材を組織で活かす~
職場におけるLGBT社員への対応
東レ経営研究所でダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長を務める講師が、LGBT社員が活躍するために周囲が気をつけるべきポイントを解説します。またアライ企業の具体的な活動の事例などを通じ、組織としてLGBTを支援するにはどうするべきかを学びます。
LGBTの働くを考える
~働きやすい職場とは~
LGBTの問題に関しては、ただ新しい知識を入れるだけでなく、「自分には何ができるか」を当事者の視点に立って考える必要があります。LGBT当事者にとって働きやすい職場とは何かを、当事者である講師と参加者が一緒に考えていく研修プランです。
LGBTに関する企業や自治体の現状
企業や自治体によるLGBT問題への取り組みはどの程度進んでいるのでしょうか。その現状を解説します。
1.企業のLGBTへの取り組み・研修の実施実態
Indeed Japanは、2023年に全国の人事担当者500名を対象にLGBTへの取組みに関する調査を実施しました。
その結果によると、実際にLGBT当事者を支援する取組みを行っている企業は全体の24.2%、さらに中小企業に限定するとわずか18.0%で、まだまだLGBT当事者への支援が進んでいない現状が明らかになりました。また企業に必要とされる具体的な内容としては「LGBTQ+を知り、理解するための研修」が1位となっています。
また同年のWorks Human Intelligenceの「LGBTQに関する意識・取り組み調査アンケート2023」結果では、同社の人事システムを利用する36法人のうち、LGBT問題へ取り組む企業に、その後押しとなった要因を尋ねたところ「従業員からの要望」(45.2%)が最多となりました。
このことから、働く人たちの間ではLGBT支援の必要性が広く認識されていていることがうかがえます。
2.企業の取り組みの一例
さらに、国内のアライ企業の取組みを紹介する「LGBT-Ally プロジェクト」への参画企業は、2020年の18社から、2022年には33社に増加しました。
例えば日清食品ホールディングスでは、LGBTQ+を正しく理解する社内イベントの実施、基礎知識や対応マナーをまとめたハンドブック配布などに積極的に取り組んでいます。
また明治では、社内啓発だけでなくバレンタインデー向けに、ダイバーシティを意識した商品を発売しました。
他にもこのプロジェクトでは規模や業種を問わない多くの企業の事例が紹介されており、国内企業にもLGBTへの支援の輪が着実に広がっていることがわかります。
3.企業による取り組みを自治体も支援
民間企業だけでなく、各自治体もLGBTが働きやすい職場づくりに取り組む県内企業をサポートするさまざまな活動を行っています。
例えば埼玉県ではアライチャレンジ企業の登録制度を実施。その一環として企業向けに研修の動画コンテンツを配信したり、企業同士の情報交換会を主催したりしています。
また札幌市の「札幌市LGBTフレンドリー指標制度」、大阪市の「大阪市LGBTリーディングカンパニー認証制度」など、埼玉県と同様の企業登録・認証制度を設ける自治体もあります。
LGBT研修は当社におまかせ
LGBT当事者が安心して活躍できる職場を実現するには、まずLGBT研修によって正しい知識を得ることが重要です。
当社は講師依頼サービスの業界においてNo.1の1万5,500人以上の講師が在籍しており、各分野別に専任スタッフが最適な講師および研修プランをご提案いたします。研修実施に際しては企画から実際の運営までをしっかりとサポート。LGBT研修においても、講演実績豊富な人気講師をアテンドできます。
LGBTの問題への取り組みとして社内研修実施をお考えのご担当者様は、ぜひ一度当社にご相談ください!
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